投稿日 : 2020.08.12
ご存知ですか?植物油インキの実情
こんにちは。営業のNです。
環境にやさしいインキということで植物油インキの問い合わせがたまたまかもしれませんが重なりました。 今回はそちらの実情についてお話したいと思います。
また植物インキのメリット、デメリットを書いています。
油性インキの印刷物には基本的には植物油インキマークがつけられます
植物油インキとはこんなマークです。
最近見かけることが増えたのではないでしょうか?
印刷インキ工業連合会様のHPによりますと 「植物油は、石油系の溶剤に比べて生分解性があり、VOCの排出もほとんどなく環境負荷低減に寄与しています。」とのことです。
たいへん素晴らしいとりくみだと思います。
また、下記のような記述もあります。
「現在ではオフセットインキのほとんどが植物油インキ対応製品となっています。」
そうなんです。2017年時点で油性インキのほとんどすべてが植物油インキになりました。
これはインキ業界の努力の賜物ですね。
こちらの印刷インキ工業連合会様の表をご覧になってください。
赤丸部分みればわかりますように、いまや95.6%が植物油インキになりました。
しかし、いまだ植物油インキは貴重なもの?との誤解があって、
「御社は植物油インキで印刷実績ありますか?」などの問い合わせがあるのが実情です。
こちらの質問に対する回答は、油性インキに限っていうと「植物油インキを使わずに印刷するほうが難しい」との回答になります。
油性インキとUVインキ
さて、ここからがすこし込み入った話になってきます。
オフセット印刷のインキは大きく油性インキとUVインキの2つにわかれます。 それぞれ乾燥方法が違います。
- 油性インキで刷ったものは自然乾燥させて紙に密着させます。
- UVインキは紫外線を照射させて速乾させることで紙に密着させます。
UVインキはいかにも環境に悪そうな名前をしていますね。
“UltraViolet” 紫外線ですよ。
UVといえば、化粧品業界ではブロックされる代表的存在だと思います。
しかし、名前からうけるイメージから意外といえばなんですが、UVインキは植物油インキより環境にやさしいとされています。
たとえばグリーンプリンティング認定制度によりますと、
植物油インキは水準2、UVインキは水準1になっています。
水準1のほうが環境配慮されているということです。
つまり、環境配慮の観点からいうとUVインキ>植物油インキ になります。
さきほどの植物油インキのメリットについてをもういちど見てください。
「植物油は、石油系の溶剤に比べて生分解性があり、VOCの排出もほとんどなく環境負荷低減に寄与しています。」 です。
これに対して、UVインキはそもそも溶剤を最初からつかっていません。
よってVOCがあまり発生せず、結果環境にはやさしいとされているようです。
鉄腕アトムは「原子力」で動いています。今から思うと大丈夫?と思いますよね。
それと同じでUVインキが発売された当時UVっていうのは格好よかったんでしょうね。
いまならば「エコインキ」とか、そんなにネーミングを変えたほうがいいかもしれません。
ただUVは乾燥のため電気の消費は多くなりがちです。
そのため総合的に判断した場合どちらが環境にやさしいかは一概にはいえないところはあります。
UVインキはやや高価ではありますが、その耐摩性や速乾性により、紙器等の包装資材ではUVインキを使った印刷方式が主流になっています。
UVインキでは植物油は不要です
油性インキならば、「油」(石油系溶剤)の部分を植物油におきかえて植物油インキになります。
しかし、UVインキはそもそも最初から「油」(石油系溶剤)がありません。
なので、UVインキで植物油インキマークをつけるのは原理上ありえないはずです。
こちらさきほどのインキ工業会様のインキ組成の画像からも一目瞭然だと思います。
https://www.ink-jpima.org/ink_kankyou.html より引用
しかし、あるお客様からの要望で調べてみたら、なんとUVインキにも植物油マークがつけられるインキがあるそうで・・・。
これって、UVインキに無理やり不要な油を足したってことですよね?
この油って必要なのかな??
あくまで推測ですが包装資材でも「植物油マークをつけたい!」という顧客の声に反論できなかったゆえの妥協の産物の予感が・・・
さきほどご説明したように、普通にUVインキを使ったほうが環境にはいいと思うのですが、やはりUVインキという名前からくる印象の悪さ、および植物油マークという環境にいかにもやさしそうな語感が魅力的なのでしょう。
われわれもきちんと説明をしていかないといけないと思いました。
Non-VOC ink というマークがあります
下記のようなマークはご存知でしょうか?
こちらは、UVインキだと植物油インキマークがつけられないことから登場したマークだと思われます。
(一社)日本WPA(日本水なし印刷協会)様のHPから引用しますと以下のように書いてあります。
「UV印刷のインキはNon-VOCではありますが、植物系 を含めて溶剤を使用しておらず、原則として植物油インキマークを入れることはできません。そこで、(一社)日本WPA(日本水なし印刷協会)が中心となり、植物油インキと比較しても環境優位性の優れたUVエコインキマークを考案しました。」
しかし残念ながら語感で植物油インキに負けており、まだあまりメジャーでないのが残念です。
包装資材へのUVインキを使った印刷に関しては無理矢理植物油にするよりは、
こちらのほうがいいとは思っています。ただ語感に勝てないのが実情です。
UVインキにはバイオマスマークもおすすめです
UVインキでしたら、今ならバイオマスインキのマークもおすすめです。
このようなマークです。
最近はペットボトルの水のラベルなどにもついておりだんだんと広がってきているのを感じます。
今後はバイオマスインキを使っていくのはいかがでしょうか?
長くなってきましたのでこちらについてはまた稿をあらためてご説明したいと思います。
こちらをご参照ください。
技術解説, 環境